4. サプリメントとドーピング:本当に必要?そのサプリメント ―競技者の食生活―

サプリメントを摂ると言うと足りない栄養素を補うイメージがあります。それでは本当にサプリメントは必要なのでしょうか?食事では不十分なのでしょうか?意図しないドーピング陽性を避けるための食事の重要性をお話しします。

スポーツ科学部  辰田 和佳子

 競技者は、サプリメントを使用しないとパフォーマンスを維持・向上できないのでしょうか?

ビタミンやミネラル、プロテインといった栄養素の補給を目的としたサプリメントをダイエタリーサプリメントと言います。ビタミンやミネラルが不足している人は、疲れから回復しにくい、体調を崩しやすいなどの症状がでるかもしれません。しかし、不足していない人が、これらの栄養素をたくさんとったからといってより健康になる、パフォーマンスがあがる、ということにはなりません。つまり、とるとよくなると感じる人は、普段、食事からの栄養素摂取が出来ていない可能性が高いわけです。

トレーニングを行う競技者にとって望ましい食事は、特別なものなのでしょうか?結論から言うと、競技をしていない人との違いはありません。ごはん等の主食を中心に、主菜、副菜が揃う、いわゆるバランスのよい食事が、競技者にとっても望ましい食事なのです。参考にしたいのは、多くの方が食べてきた「給食」です。主菜を増やす、何か特別な食品を食べるのではなく、消費に合わせて「給食」のバランスのまま全体量を増やせばよいだけです。量が多くなり食べきれなければ、食間におにぎりなどの軽食(補食)が必要になります。また食事だけではとりにくい栄養素を含む乳製品や果物も適宜補給しましょう。筋肉を増やしたいならすぐプロテインを飲めばよいと考える人もいますが、筋の合成に利用できるたんぱく質量には限りがあります。たくさんとっても余分は体脂肪に変換され貯蔵されることになります。何より筋量を増加させるには、トレーニングが不可欠です。

もう一度確認です。食事は、トレーニングを行うための土台です。競技者も競技をしていない人も何をどれだけ食べればよいのか。基本は2つ。

①食べている量が消費量に見合っているかは、体重測定により確認していくほかありません。毎日の体重を記録し変動を見ていく(モニタリング)することが大切です。からだ作りの時期なのに体重が減ってきていないか、体重の増減が激しくないか、夏の暑い時期に体重が減り続けていないか、などを確認していきましょう。単に数字でなく、体重増減の背景には何があるかを考えることが大切です。

②何を食べればよいのかは、難しく考えなくても主食・主菜・副菜を揃えることで様々な栄養素がとりやすくなります。まずは、1日に2食はこの3皿を揃えることから始めましょう。外食や自炊でも主食・主菜・副菜を揃えることは難しくありません。カレーライスは野菜や肉も入っているので1品で主食・主菜・副菜が揃った料理です。たくさんのお皿を並べなくてもよいのです。時間がない中で自炊をする人も副菜だけはスーパーやコンビニで買う。簡単なレシピ(図)を利用する等、工夫次第でできますね。

トップアスリートでもみんなが日常的にサプリメントを使用するわけではありません。「うっかりドーピング」のリスクを避けるためにも、まずは自分の食事から見直してみませんか。