5.スポーツ歯科とアンチ・ドーピング:スポーツ歯科の歯科衛生士の取り組み

お口の中の状態がアスリートのパフォーマンスに影響を与える事はよく聞く話です。それではアスリートのお口の中の状態はどのようにケアされているのでしょうか?歯科衛生士の先生にお話をいただきました。

歯学部 本田 麻璃子

 スポーツ歯科の歯科衛生士は、診療やマウスガードの作製のアシスタント、外傷患者に対する専門的な口腔ケアを行なっています。また、外傷の状態や治療後の口腔内の状態に合わせ、一人一人に適したブラッシング指導も行います。

 スポーツ歯科医学会ではスポーツデンタルハイジニストという認定制度があります。認定研修会の受講や筆記試験を受けて取得する為、技術だけではなく充分な知識も必要になります。

 また、複数のスポーツ選手(日本大学競技部の学生)の口腔清掃状態や習慣的飲料を調査し、唾液検査、歯周病検査等を行なった後に、ブラッシング指導を実施、経過を追った研究をさせて頂きました。主に歯科衛生士はブラッシング指導を担当し、企業から提供して頂いた電動歯ブラシを用い、いくつかの部活に電動歯ブラシを使用してもらいました。その結果、口腔内環境の改善、すなわちむし歯や歯周病のリスクが軽減されたことを、学会にて発表させて頂きました。今後も選手の口腔内環境の改善の為にも、様々な視点から研究、発表を行なう予定です。

 また、日本大学歯学部付属歯科病院の歯科衛生室では、スポーツ日大 アスレティックセンター八幡山のスポーツデンタル(歯科健診室)においてスポーツ歯科に所属する先生方と月、火、水曜日に歯科健診およびブラッシング指導を行なっており、治療が必要となった学生はスポーツ歯科の先生が日本大学歯学部付属歯科病院にて処置をし、必要に応じて歯科衛生士が、お口の中のクリーニングも行なっております。また、マウスガードの装着が義務化されている競技もありますが、練習中に起こる外傷や脳震盪の予防の為にも多くの学生に装着を勧めています。

 スポーツ選手にとって口腔内環境の不良はパフォーマンスに大きな影響を与えます。少しでも自身の口腔内への関心を持ってもらい、我々が口腔内の環境を整える一助となれればと思い、学生と向き合っています。

 歯科衛生士として、合同のテーマであるアンチドーピングについての取り組みは行なっておりませんが、サプリメント等を使用する際の注意の呼びかけを先生方と行なっていきたいと思います。